Research

当教室では、腎病理、肺病理、婦人科病理、眼病理を主体とする炎症性疾患・腫瘍に関する研究を形態学的・分子生物学的手法を用いて行なっています。

【研究テーマ】
◇腎病理

    腎炎、特に糸球体腎炎の発症・進展機序の時空間的役割に興味を持って研究しています。我々はこれまでに、ANCA関連腎炎の発症には糸球体内でのCXCL1およびCXCL2の発現増加を介した好中球遊走が重要であることを報告しました (Kanzaki G et al., Nephrol Dial Transplant. 2016) 。また、造血幹細胞移植後の急性GVHDの標的臓器として腎臓はこれまでにあまり注目をされていませんでしたが、ラット骨髄移植モデルによる急性GVHDでは皮膚・腸管・肝臓といった組織と同様に、腎臓も傷害されることを見出しました。そしてこの腎傷害には液性免疫ではなく、CD4, CD8陽性T細胞やマクロファージによる細胞性免疫が関与していることを示しました(Higo S et al., PLoS One. 2014)。

 アミロイドをはじめとした沈着症では、タンデム型液体クロマトグラフィー質量分析器(LCMS/MS)を用いて、網羅的に沈着物を細分化する試みを行っています。最近では、重鎖沈着など従来法では解析が難しかった疾患などの新しい知見を蓄積しています。パラフィンブロックからのマイクロダイセクションにより選択的に沈着部位のみを採取することで、より正確な診断ができる可能性を見いだしています。

    現在はこれらの基礎研究や診断に寄与する研究を継続するとともに、骨髄移植後の慢性GVHDにおける腎傷害メカニズムや糸球体内皮細胞・上皮細胞(ポドサイト)間クロストークに関する研究も推進しています。


◇肺病理

    主に間質性肺炎における線維化巣の質的・形態学的変化に関する研究を行なっています。これまでに、Usual Interstitial Pneumonia (UIP)の早期線維化巣では4型コラーゲンのα1鎖とα2鎖が認められる一方で、organizing pneumonia (OP)では認められないことを見出しています (Urushiyama H et al, Lab Invest. 2015)。そして、早期線維化巣の4型コラーゲンα1鎖・α2鎖はFAK脱リン酸化を介して線維芽細胞の走化性を制御していることを明らかにしました。

 また診断病理学的に肺Catsleman病とIgG4の組織学的違いについて多数施設との共同で多症例の解析を行い報告しています(Histopathology, 2017 in press)。肺MALTリンパ腫に伴うクリスタルの沈着物を様々な手法を用いて詳細に解析し報告しました (Human pathology, 2016)。

婦人科病理

    子宮平滑筋肉腫にごくまれに出現する骨芽細胞様巨細胞 (OLGCs) の存在は報告されていましたが、その性質については不明なままでした。最近、我々は通常の子宮平滑筋肉腫と比較してOLGCsを伴う子宮平滑筋肉腫では、骨芽細胞分化に関与するサイトカインRANKLの発現が著しく上昇していることを見出しました (Hum Pathol. 2015)。子宮平滑筋肉腫におけるこのRANKL発現とOLGCsとの関係について興味をもって現在研究を進めています。

眼病理

    抗糖尿病薬として知られるPPARアゴニストは近年その抗炎症効果が示され、各種炎症性疾患への適用が期待されています。我々は、ラットアルカリ熱傷モデルへPPARアゴニストを点眼薬として用いることで、マクロファージ浸潤及び炎症性サイトカインの産生抑制を介して角膜炎症を減弱できることを示しました (Uchiyama M et al., Mol Vis. 2013)。現在その詳細な機序について研究を進めています。